雑草研究
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カヤツリグサ科水田多年生雑草クログワイの表現型変異と適応について
小林 央往植木 邦和
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1983 年 28 巻 3 号 p. 179-186

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抄録

クログワイ (Eleocharis kuroguwai Ohwi) の変異と適応に関する考察に資するため, 近畿地域を中心に採集した102クローンとオオクログワイの1クローンの計103クローンの17形質の形質間相関行列を用いて主成分分析 (PCA) を実施した。その結果, 第1から第4主成分までの累積寄与率は約81%になり, 第1, 第2, 第3および第4主成分はそれぞれ草型, 各器官の重さ, 塊茎および最長ライゾーム長に関する情報を示すことがわかった。第1, 第2主成分から下記の溜池群, 水田群, 平野群の3群が, また第3主成分から大島群の計4群が認められた。
(1) 溜池群: 播州平野の溜池やその他の地域の池, 農業水路に生育し, 茎・ライゾームは太く草丈は高くきわめて大型で少数の大きな塊茎を生産する。塊茎形成は極めて早く, 8月中旬頃からである。
(2) 水田群: 次の2群を除く大部分の水田由来クローンが属し, 相対的に小型できわめて変異に富み, 9月上旬から10月にかけて小型の塊茎を多産する。
(3) 平野群: 主に大阪平野に由来し, やや大型で溜池群と水田群の中間的な特性を示す。
(4) 大島群: 紀伊半島南端の海岸近くの水田および紀伊大島の水田に由来し, 草型は溜池群と水田群の中間であるが魂茎形成は極めて遅く, 10月上旬より小型の塊茎を比較的多く生産する。
この様な変異群はそれぞれの生育地にきわめてうまく適応した特性を有していると推察される。

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