雑草研究
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筑後川下流域のクリーク雑草「チクゴスズメノヒエ」の生態と防除
第4報 種子繁殖に関する調査
大隈 光善千蔵 昭二
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1984 年 29 巻 1 号 p. 45-50

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抄録
1) チクゴスズメノヒエの種子生産量, クリーク中の種子の発芽性及び実生個体の生育状況等をキシュウスズメノヒエと対比して, 種子繁殖の可能性を検討した。
2) チクゴスズメノヒエの種子生産量は, 生育場所や繁茂程度等で異なったが, 1穂当り約100粒程度であり, クリーク一面に繁茂している場合, 1m2当り約10万粒と推定された。
3) チクゴスズメノヒエ及びキシュウスズメノヒエ種子の稔実率は, いずれも全期間を通じて平均5~10%であった。
4) 自然条件下でクリーク水中へ落下した種子は翌春まで生存しており, 高い発芽力がみられた。
5) 稔実種子は, 5~10℃の低温と適度の水分条件に1か月間程度置床することにより, 一部に休眠が覚醒された。また, 変温の効果も認められた。
6) 種子の発芽温度は, 本実験の範囲では最適30℃, 最低20℃, 最高40℃であった。
7) チクゴスズメノヒエとキシュウスズメノヒエの間には幼植物においても, 2, 3の特徴的な形態的差異がみられた。
8) 実生個体は, キシュウスズメノヒエでは7月中旬, チクゴスズメノヒエでは8月中旬までに, 栄養繁殖個体と同等の茎径を示す程度に生長した。
9) これらの結果から, チクゴスズメノヒエは, キシュウスズメノヒエ同様に, 種子繁殖の可能性が明らかになった。
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