抄録
メヒシバ数集団の出穂習性について, 圃場および環境制御条件下で調査, 検討した。
1983年秋に九州および四国地方の14地点において, それぞれ50~100個体の成熟した穂を採集し, 供試集団とした (Table 1)。
熊本 (32°53′N) において, 14集団を1984年6月12日に播種し自然日長条件下で圃場栽培した。出穂始日には, 集団平均値で7月17日から9月12日にわたる著しい集団間変異が認められた。この変異は, 地域集団間のみならず, 同一地域内 (熊本県西合志町) の生育地を異にする集団間にも存在した (Fig. 1)。
屋外自然日長条件下において, 3集団 (CK-1, NS-3, NN-1) を4月から9月にかけて6回にわたり播種, 栽培し, 出穂始日を調査した。早生集団 (CK-1) の到出穂日数は季節的な日長変化にほとんど影響されなかった。他方, 晩生集団 (NS-3, NN-1) の出穂は6月, 7月における長日条件により抑制される傾向が認められ, 4月播種の個体においても8月中旬に至るまで出穂が見られなかった (Fig. 2)。
3集団を24時間, 15時間, 13時間の日長制御条件下で栽培し, 日長の出穂におよぼす影響を検討した。早生集団 (CK-1) の到出穂日数には日長条件の違いによる影響は認められなかった。他方, 晩生集団 (NS-3, NN-1) では, 13時間日長条件下においてはそれぞれ播種後42日, 54日で出穂したのに対して, 24時間および15時間日長条件下においては播種後120日目の実験終了に至るまで全く出穂が認められなかった (Table 2)。
以上の結果から, メヒシバの出穂習性には顕著な集団間変異が存在すること, また, ここで供試した早生集団は出穂が日長条件により影響されない中性型, 晩生集団は出穂に短日条件を要求する短日型の出穂習性を示すことが明らかとなった。