雑草研究
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プレチラクロールの選択性機構に関する研究
1. 各種植物のプレチラクロール抵抗性とグルタチオン含量およびグルタチオン S-トランスフェラーゼ活性との関係
沈 利星臼井 健二石塚 皓造
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1990 年 35 巻 1 号 p. 25-35

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抄録

イネ科植物4種類と水田の多年生雑草3種類を用いて, それらのプレチラクロール抵抗性とグルタチオン含量およびグルタチオンS-ランスフェラーゼ (GST) との関連性を調べ, 更にプレチラクロール処理によるGSTの誘導について植物種間差を調べた。また, 光と外から与えられた還元型グルタチオン (GSH) およびプレチラクロール薬害軽減剤 CGA-123407 の影響も検討した。
イネ科植物ではイネ (Oryza sativa L. cv. nihonbare) とトウモロコシ (Zea mays L. cv. honeybantam) がプレチラクロールに対し抵抗性で, タイヌビエ (Echinochloa oryzicola VASING.) とシコクビエ (Eleusine concana GAERTN.) が感受性であった。多年生雑草ではウリカワ (Sagittaria pygmaea MIQ.) とクログワイ (Eleocharis kuroguwai OHWI) が高い抵抗性を, ミズガヤツリ (Cyperus serotinus ROTTB.) は比較的に感受性を示した (Table 1)。グルタチオン含量はイネ科の中で成苗の場合も幼苗の場合もトウモロコシで最も高くて, タイヌビエで最も低く, 成苗と幼苗の比較ではタイヌビエを除き成苗の方が低かった。また多年生雑草のグルタチオン含量はイネ科植物のそれより低かった (Table 2)。GSTは用いられた基質 (CDNB, 14Cプレチラクロール) に関係なくイネとトウモロコシで高い活性を、タイヌビエとシコクビエで低い活性を表した。プレチラクロール抵抗性とグルタチオン含量との関連性は見られなかった (Fig. 1)。供試した多年生雑草の酵素活性はイネ科植物より低くて, プレチラクロール抵抗性との関連性はなかった。GSTはプレチラクロールによって誘導され, 誘導能力はイネ科の抵抗性植物で高くて感受性植物で低かった (Table 3, 4)。
光照射により植物体内グルタチオン含量が増加した。しかし, 光によって増加されたグルタチオンによるイネのプレチラクロールの薬害軽減は見られなかった (Table 5)。外から与えられたGSHは植物体内に容易に吸収されるが, 吸収によって増加されたグルタチオン含量もイネとシコクビエにおけるプレチラクロール薬害を変えなかった (Table 6, 7)。一方, CGA-123407は選択的にプレチラクロールによるイネの生育阻害を回復させた (Fig. 2, 3)。CGA-123407処理によってグルタチオン含量はイネとシコクビエでともに上がるが, GST活性はイネでのみ選択的に高くなり薬害軽減効果と一致した (Table 8, 9)。

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