雑草研究
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ニンジン培養細胞のグルホシネート耐性とその機構
スワンウォン スィーソム臼井 健二石塚 皓造
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1990 年 35 巻 1 号 p. 53-60

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抄録

既に, ニンジン (Daucus carota L. cv. Harumakigosun) の培養細胞を10μMのグルホシネート (GLU) を含む培地中にて継代培養すると, 約500倍以上の耐性を持つ細胞が得られた。この耐性細胞を用いて, GLUに対する耐性機構を調べた。先づ, GLUの細胞内への取り込みを調べたが (Fig. 1), 耐性細胞は元々のGLU未処理の細胞 (通常細胞と称す) に比べて取り込みが著しく抑制されているということはなかった。次に, 細胞内に取り込まれたGLUの代謝を調べた (Fig. 2)。14C-標識GLUを培地に加え, 300分間細胞を暴露させた後に50%エタノールで抽出分画を行った。親化合物の細胞内集積を見ると, 通常細胞の細胞内量比は耐性細胞のそれより高く, またGLUの吸収に伴って通常細胞では経時的に直線的に増加するのに対し, 耐性細胞では120分後以降減少する傾向が認められた。このことから, 耐性細胞内におけるGLUの消失速度が通常細胞内より大であることが推察された。
一方, GLUの作用点と想定されるグルタミン合成酵素 (GS) の活性とそれに対する影響を調べた (Fig. 3, 4) ところ, 耐性細胞内のGS活性が通常細胞のそれに対し著しく大であること, また細胞増殖期の方が定常期より大であることが認められた。GLUによる細胞内のアンモニア蓄積は耐性細胞では起こらないことが確認された (Fig. 5)。
細胞内遊離アミノ酸とアミドの量をGLU存在下で通常および耐性細胞について比較定量した (Table 1)。GLU未添加のとき耐性細胞ではアミノ酸・アミド総量が通常細胞に比し22%多かった。GLUを細胞に与えると, 通常細胞ではアミノ酸・アミド総量の急激な減少, 特にグルタミンの減少が著しく, アラニン, バリン, セリン, グルタミン酸, アスパラギン酸が減少した。しかし耐性細胞ではその様な著しい減少は起らなかった。高いGLU代謝・消失能および高いGS活性が耐性機構に寄与し, 体内アミノ酸・アミド代謝の攪乱を少なくしているものと結論した。

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