雑草研究
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Juglone の高等植物に及ぼす生理影響および作用機構
李 海航西村 弘行長谷川 宏司水谷 純也
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1993 年 38 巻 3 号 p. 214-222

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抄録

Juglone は長い間植物間相互作用のアレロケミカルズのモデル物質として研究されてきた。この物質と植物細胞の伸長・呼吸・オオムギ糊粉層細胞におけるジベレリンによって誘導されるα-amylase 活性と蛋白質の含量および生体内のSH基を持つ物質 (アミノ酸, ペプチドおよび酵素等) との相互作用を調べた。10-4Mと10-3Mの juglone はエンドウ上はい軸の細胞伸長を50%と80%, オオムギ幼芽鞘の細胞伸長を75%と96%抑制し, エンドウとオオムギ根の細胞伸長もそれぞれ90%から100%まで抑制した (Fig. 1)。Juglone は10-3Mでエンドウとレタス幼苗の根の呼吸 (酸素吸収) をそれぞれ10分あるいは30分以内に強く低下させ, 2時間あるいは6時間で完全に抑制した (Fig. 2)。オオムギ糊粉層細胞におけるジベレリンによって誘導されるα-amylase 活性と可溶性蛋白質の含量も10-3Mの juglone によってそれぞれ74%と80%抑制された (Table 1)。また, juglone はアミノ酸の cysteine, ペプチドの glutathione, 蛋白質の牛血清アルブミンおよび植物抽出物中のSH基と反応し, これらの物質中のSH基を完全あるいは部分的に消失させた (Table 2)。以上の結果から, juglone は生体内のSH基と反応し, いろいろなSH基に関連する生理生化学反応を阻害し, これによって植物の成長と種子発芽等を阻害する代謝阻害物質であると考えられる。

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© 日本雑草学会
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