雑草研究
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準絶滅危惧種ミクリ (Sparganium erectum L. var. erectum) とオオミクリ (S. enotum L. var. macrocarpum (Makino) Hara) の自生集団におけるフェノロジーと種子発芽特性の調査
石居 天平中山 祐一郎山口 裕文
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2005 年 50 巻 2 号 p. 82-90

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抄録

滋賀県今津町の河川に自生するミクリ (Sparganium erectum L. var. erectum) と和歌山県貴志川町のため池に自生するオオミクリ (S. erectum L. var. macrocarpum (Makino) Hara) のフェノロジーを調査し, 自生地から得た種子を用いて発芽試験を行った。両変種は早春に地上部のシュートを発生し, 6月頃開花し, 夏に種子を散布し, 冬には地上部が枯れる夏緑性多年生草本の生活史を示した。ミクリでは, 一年に生じるシュートのうち開花結実するシュートの割合が高く, 攪乱にともなって果実やラメットが散布され, 自生地では春と秋に実生の生育がみられた。オオミクリでは, 開花結実するシュートの割合が低く, 種子は散布されたものの, 実生の生育は認められなかった。果皮の切除処理と段階温度法によって種子の休眠特性を分析したところ, 両種とも結実直後の種子は休眠状態にあり, 一定期間は果皮を切除しても発芽しないが, 約1年間の後熟の後に休眠覚醒し, 果皮を切除すると発芽した。ミクリの種子は発芽に変温要求性を示し, オオミクリの種子は変温をあまり要求しなかった。野外での観察結果とあわせると, ミクリは特定の季節に発芽する性質をもつと推定された。河川に自生するミクリの生活史特性は攪乱の頻繁な生育地に適し, ため池に自生するオオミクリの生活史特性は攪乱頻度の低い環境に対応していると考えられた。

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