湿地研究
Online ISSN : 2434-1762
Print ISSN : 2185-4238
ヒシクイの採食行動に水位が与える影響
田尻 浩伸
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2021 年 11 巻 p. 75-84

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抄録

継続して人の手が加えられてきた里地里山環境では,今後も生物多様性を維持するには保全対象種の生態を考慮した管理を行なうことが重要である.筆者は,農業用のため池およびカモ猟の猟場として利用されている石川県加賀市の片野鴨池において,その鳥類相を特徴付ける希少種ヒシクイ(亜種オオヒシクイAnser fabalis middendorffii)の採食行動に水位が与える影響を調べ,その結果に基づいた水位管理手法を検討した.調査期間中,設置した水位計の値(基準水位)は20 cmから65 cmの範囲で変動した.ヒシクイの採食行動は水深の影響を受けており,採食場所の水深が80 cmより浅い時には採食個体の割合は0から1までの幅広い値をとっていたが,それより深いと割合は低下した.水位が浅い時にはヒシを採食する個体と抽水植物を採食する個体のどちらの割合も0から1までの幅広い値をとっていたが,ヒシを採食していた個体の割合は基準水位が上昇するにつれて低下し,一方,抽水植物を採食していた個体の割合は基準水位が高くなるにつれて上昇した.以上より,ヒシクイの採食環境と食物選択性の幅を維持するためには,浅い水位を維持するように管理するとよいと考えられた.

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© 2021 日本湿地学会
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