抄録
近年,多くの国際協力事業において,住民参加は最も重要な要素の一つとして位置づけられ,ボトムアップ型の支援を通じて住民の主体性(オーナーシップ)を高めていくことの重要性を主張する研究者は数多く存在する.しかし,それを実現させるための具体的な方法について,事例研究に基づいて明示するに至った例は少ない. 本研究では, 国際協力事業を通じて住民の主体性を高めていくための具体的な方法について,国際協力機構(JICA)が支援を行ったインドネシアの泥炭火災予防プロジェクトの事例に基づいて検討を行う.プロジェクト活動参加者への半構造化インタビューの結果, ファシリテーションを通じ,住民自らが議論し意思決定を行う機会を十分に提供すること,異なるステークホルダー間におけるネットワークの構築を支援することが,効率的かつ効果的に住民の主体性を強化し,より持続的なコミュニティの発展に寄与することが示唆された.