抄録
本稿では, 精査用胸部 X 線 CT 像を用いた炎症性小結節(病変部)の認識法を提案する. ここでは, 良性を強く示唆する画像所見を呈する小結節を炎症性小結節と呼ぶ. これらはその画像特徴のみから良性であると医師が判断できる. しかし, 医師の負担を軽減するために計算機による支援が望まれる. そこで, 計算機による炎症性小結節(良性)とその他(一部の良性, および悪性)の分類を試みる. 認識に用いる特徴は, 結節の大きさ, 胸壁との距離, 形状の複雑さ, 結節の境界に直線状の部分が多く含まれること, 結節内部の CT 値の一様性, および, 結節と胸壁との間の細線(小葉間隔壁)の可視性の 6 つである. これらの特徴を定量化し, 事前確率が等しいと仮定したロジスティック判別により認識を行った. 直径 10mm 以下の充実型の小結節 83 個(炎症性小結節44個を含む)に対して, L 法による認識実験を行った結果, 認識率は 78 % となった. さらに, ロジスティック回帰モデルに当てはめた時, 各特徴量の存在の必要性を有意水準 0.05 で仮説検定を行ったところ, 大きさとCT値の一様性に対応する特徴量に対して有意性が確認された.