抄録
近年美術品のデジタル化を通して美術館をサポートすることが注目されている. 一方, 実際の絵画は定期的な修復が重要とされているが, 修復におけるデジタル化や画像処理を統一的に扱った研究はない. 本論文では実際の修復を仮想修復によってサポートすることを目標に, デジタル化から劣化の抽出, 仮想修復までを統一的に検討した. ここでは, 剥落が生じている油絵を対象に, 油絵の構造を考慮した2層形状モデルを定義し, 形状のデジタル化を行うことで剥落箇所を抽出した. また, 剥落に対する実際の補彩修復とデータ欠損に対する画像処理の補間手法について考察し, 仮想修復を行った. 更に補間結果を改善するために質感の付与を検討した.