抄録
変形に富む線図形の認識について多くの実験がなされてきているが,マッチングの尺度の妥当性については十分な検討はなされていない.例えば,オンライン文字認識において,文字パタンは方向係数の系列としてしばしば表される.しかし,方向係数をユークリッド空間のときと同様に演算した場合,さまざまな矛盾が生じる.これに対して,本報告では,矛盾の生じないマッチング尺度としてベクトル相関を採用する.ベクトル相関にはいくつかの種類があるが,ここではWatson-Beranの相関,Stephensの相関,尺長の相関など,ベクトル相関を利用して文字識別系を構成した.識別実験を行った結果について報告する.