抄録
多次元尺度構成法(MDS : Multidimensional-Scaling)を使用して,3 色覚者に内在する 2 色覚性を
調査した.その結果,正常な 3 色覚を有する日本人の多くの場合には「R-G 軸を中性色に保ち,Y-B 軸のみを変更
した刺激」を観察した際に得られた解析結果の散布図が凹型の 2 色覚性の特徴を強く示した.主観的な顕著性に関
する追加の一対比較実験を行った結果,MDS の第 2 軸が顕色性(知覚された色味の顕著性)を反映していることを
示した.換言すると,正常な 3 色覚者であっても,短波長もしくは長波長へのスペクトラムの偏りの信頼性に基づ
く評価軸を有していることを意味する.人間の視覚系が,自然,特に農村部の環境に適応したことは非常に合理的
であると考えられる. 一方で, R-G のみを変化した刺激を観察した際には MDS の第 2 軸が「明るさの顕著性」
を反映していることを示唆した.