抄録
土壌汚染対策法の施行によって, 汚染原因者のみならず土地所有者が自己の所有した土地の汚染調査と, 汚染判明時の浄化責任が問われることになる。特定有害物質を取り扱っていた工場跡地などでは土地資産の著しい低下につながり, 土地の所有自体が浄化責任の発生による負担増をもたらす恐れがある。現状の社会経済情勢を考慮すると, 効率的で経済的な地盤汚染対策の確立が喫緊の課題となっている。今後の方策として, 浄化レベルや対策工が適正なものであることを定量的に評価し, 周辺住民へのリスクコミュニケーションを円滑化するという観点から, 環境リスク評価を地盤汚染対策の基本とすることが重要である。
本報では, はじめに地盤汚染の現状と対策を土壌汚染対策法の施行による影響を含めて簡潔に述べる。さらに, 地盤汚染に伴う環境リスクの評価手法の概要を示し, ある汚染サイトで実施された地盤汚染対策の妥当性を, リスクの低減量の観点から検討した事例を紹介する。