文化人類学研究
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特集論文 特集1 在来・地域知と科学知の融合はいかにして可能か?
在来・地域知の不完全性と戦略的シンプリフィケーションにおける知の適用
――マサイの経験とアフリカの知に基づくリプライ――
目黒 紀夫
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2023 年 24 巻 p. 20-38

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抄録

 本稿では、在来・地域知の全体性・統合性を前提とするとそれと科学知との対等な融合は実現不可能ではないのかという第1の問いと、在来・地域知と科学知に関して提示された共存と戦略的シンプリフィケーションという2つの選択肢の妥当性と実現可能性はどのように考えられるかという第2の問いに対して、マサイおよびアフリカを研究対象とする立場からリプライをする。第1の問いに関しては、科学知の浸透によって在来・地域知の全体性・統合性が消失する可能性は否定できないが、科学知によって常に在来・地域知が駆逐されたり破壊されたりする訳ではないことを指摘するとともに、全体性や統合性といった完全性に繋がるような捉え方を放棄し、その代わりに核という視点と不完全性の知に基づき在来・地域知を流動的で開放的な関係性として考えることを提示する。第2の問いに対しては、在来・地域知を不完全性に基づく知と考える立場からすると、共存の選択肢は「ブリコラージュ」や「コンヴィヴィアリティ」の歴史的な実践にそぐわないものであり妥当とは言えないことをまず述べる。次に、戦略的シンプリフィケーションの選択肢は、在来・地域知の全体性・統合性に固執しない点や外部者の関与を想定しつつも地域住民の意思決定を保障しようとする点、既存の政策や社会認識の変容を目指す点で妥当なものと考えられることを説明する。そして、戦略的シンプリフィケーションの実現可能性に関しては、その一連の過程として知の生産・循環・適用の全ての局面が含まれている点は評価できるが、生産の段階に比べると循環と適用の段階についてより具体的かつ現実的な論理を構築することが、政策の変容を実現するためには求められることを指摘する。最後に、戦略的シンプリフィケーションを実現するための前提として「良心的な外部者」が想定されているが、地域住民が翻訳者や伝達者の役割を果たす可能性と、外部者であれ地域住民であれ政策変容を実現するために具体的に必要な働きの詳細の更なる検討が必要に思われることを述べる。

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© 2023 現代文化人類学会
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