本稿は、日本の現代人形劇史において重要な位置を占める「人形演劇プロジェクト2000」の事例から、人間と非人間の「等価値」な関係性が、実践のなかでいかにして育まれていったのかを明らかにするものである。このプロジェクトは、チェコ式オブジェクト・シアターの作劇法を学ぶ機会を提供することによって日本人形劇界の意識改革を目指した、約20ヶ月に及ぶ長期ワークショップであった。オブジェクト・シアターとは、人形遣いが明確な俳優として舞台に立ち、人間や動物を模った人形の代わりに日用品や身の回りの素材といったモノを遣うパフォーマンスであり、海外では比較的ポピュラーな現代人形劇の形式である。現代の人形劇研究は、オブジェクト・シアターをはじめとする実践の多様化に伴って、次第にポスト・ヒューマニズム的傾向を強め、物質論的転回と呼応しはじめた。これまで民族芸術としての人形劇に関心を向けてきた人類学者たちは、現代人形劇が人間と非人間の相互的な交渉を実験する場となっていることに注目しつつあるが、オブジェクト・シアターに対する調査は未だ乏しい。本稿を通して、人類学的研究の事例として、とくに生命をめぐる問題系において、オブジェクト・シアターと現代人形劇の実践に注目する意義と可能性を示したい。
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