女性学
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2023年6月刑法改正
―同意のない性的行為は処罰されるのか
中山 純子
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2024 年 31 巻 p. 23-35

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抄録

 日本の刑法では、強制性交等罪・準強制性交等罪が成立するためには、性交等に同意していないだけでは足りず、相手の抗拒を著しく困難にする程度の暴行又は脅迫が用いられていること、あるいは、これと同程度の抗拒不能状態で性交等がされたことが必要とされてきた。フリーズして抵抗できなかったら、抵抗していないから同意していた、同意があったと思ったと弁解される。抵抗したら、抵抗できているから抗拒不能ではないと評価される。暴行・脅迫要件、抗拒不能要件が、同意のない性交等の被害者をずっと苦しめてきた。

 2017年6月、110年ぶりに刑法の性犯罪規定が改正されてから6年がたった2023年3月、暴行・脅迫要件、抗拒不能要件を、「同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全うすることが困難」という要件とし、罪名を「強制性交等罪」から「不同意性交等罪」へと改正する法案が国会に提出された。同改正案では、性交同意年齢(相手の同意の有無を問わず犯罪となる年齢)が、13歳未満から、一応16歳未満に引き上げられている。また、地位関係性を利用した性犯罪に対処するために、同法案には、「不同意性交等罪」の規定の中に、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させ」という文言が例示されている。今回の改正案が、同意のない性交等の被害を処罰対象とするのに十分な改正となるのか。改正に至る経緯を含め、議論する。

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