X線分析の進歩
Online ISSN : 2758-3651
Print ISSN : 0911-7806
原著論文
鉛ガラス-鉛系釉薬試料の蛍光X線分析における検量線法の適用
権代 紘志阿部 善也中井 泉
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2011 年 42 巻 p. 325-340

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抄録

遺跡から出土される考古遺物として重要なガラスや陶器の中には,特異的に鉛や錫などの重元素を多く含むタイプがある.考古化学では,簡易迅速・非破壊で測定可能な蛍光X線分析は重宝されているが,このような重元素を多く含む考古遺物に対してはマトリックス効果のため定量分析が困難であった.本研究では,鉛ガラスや鉛系釉薬に近い標準試料を用いることで,実験的補正定量法の観点から重元素の含有量に関係なく検量線を作成できるような補正モデルを探索した.その結果,考古遺物の成分元素の酸化物や炭酸塩を混合し,ブリケット法で作成した自家標準試料の測定データから,PbOとSnO2の含有量を変数とする補正モデルを導出した.

提案した補正法により各成分の検量線を作成したところ,全成分の検量線の直線性が飛躍的に改善された.実際の鉛釉薬が施されたイスラーム陶器の遺跡出土試料の分析に応用したところ,より正確な特性化プロットを作成することができた.本法はこれまで蛍光X線分析による定量が困難であった鉛ガラスや鉛系釉薬の定量分析を可能にし,実用性と汎用性の高い方法となることが期待される.

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© 2011 公益社団法人日本分析化学会 X線分析研究懇談会
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