2012 年 43 巻 p. 465-470
広島大放射光センターでの軟X線XAFS測定において,単素子のSDD(silicon drift detector)とデジタルパルスプロセッサーを用いる蛍光X線測定系を導入し10万cps程度までの計数率に対応できるようになった.さらに,デジタル信号処理の利点として,エネルギー分解能を要するパルス処理と並列して,数え落としが無視できる早い信号処理を行うことで,数え落としを実測しながらのXAFS測定が実現した.本システムを用いて塩化カルシウム溶液のカルシウムK殻XAFS測定に取り組み,蛍光法を用いてmMレベルからMレベルの高濃度溶液まで対応できることを示した.同時に数え落としを補正した条件でも500 mM以上の濃度ではスペクトルの変形が観測され,高濃度の試料で現れる自己吸収効果であることが確認された.