2019 年 50 巻 p. 151-160
美術品や絵画の測定では,試料を傷つけないよう,非破壊・非接触での方法が求められる.蛍光X線分析はこの目的に対して適した技術の1つである.元素画像を得るために,微小X線ビームを用いた分析法が開発されてきた.安全に絵画の測定を行うために,試料と装置間での作動距離(Working Distance:WD)を従来の装置よりも長くできる集光素子を開発した.本発表ではモノキャピラリー内壁に金のコーティングを施し,全体を回転楕円体に設計することにより,従来よりも集光効率が高くWDを大きくできる集光素子(長作動距離モノキャピラリー集光素子)を用いた絵画用X線分析顕微鏡を開発し,これを用いてフィンセント・ファン・ゴッホの絵画作品(ポーラ美術館収蔵)の絵具層分析に応用した結果を報告する.