X線分析の進歩
Online ISSN : 2758-3651
Print ISSN : 0911-7806
解説 (依頼)
ミューオンX線による非破壊元素・同位体比分析の進展
佐藤 朗
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 52 巻 p. 25-32

詳細
抄録

近年,実用化に向けた開発が著しいミューオンX線分析法について紹介する.高エネルギーのミューオン特性X線を使用する本分析法は,軽元素を含む元素組成の分析のみならず,同位体比,元素の化学状態の情報を完全非破壊で調べることができる新しい分析方法として,考古学や文化財科学,地球惑星科学など,希少試料を扱う分野で注目を集めている.2000年以降のミューオンビーム関連技術および検出器技術の向上に後押しされ,ここ数年のミューオンX線分析法の研究開発にはめざましい進展がある.古代青銅器や小判などの文化財試料の定量分析に成功し,はやぶさ2が持ち帰る地球外試料の初期分析計画も進行中である.さらに,新しい元素マッピング法や,超伝導X線検出器による超高エネルギー分解能システムの適用など,世界4つのミューオン施設を中心に最先端技術を投入した研究開発が進められており,今後数年にもさらなる分析性能の向上が期待される.

著者関連情報
© 2021 公益社団法人日本分析化学会 X線分析研究懇談会
前の記事 次の記事
feedback
Top