X線分析の進歩
Online ISSN : 2758-3651
Print ISSN : 0911-7806
装置計測
電子収量法を用いた軟X線XAS測定における絶縁性試料のチャージアップの検討
山岸 弘奈渡邊 巌小島 一男
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 52 巻 p. 63-68

詳細
抄録

立命館大学SRセンターBL-11において,絶縁性の高い粉末試料(AlF3とLiF)のF K吸収端X線吸収スペクトル(XAS)を測定した.測定手法としては,試料電流を検出する全電子収量(TEY)法と,マイクロチャンネルプレート(MCP)を検出器とした部分電子収量(PEY)法を使用し,両者を同時に用いてスペクトルを得た.PEY測定とするためにMCPの前にメッシュ電極を置き阻止電位を印加した.TEY法によるスペクトルは,試料表面のチャージアップの影響を受け,エネルギーの走査方向やデータの溜め込み時間に依存してスペクトルの形状が変化することを確認した.一方で,PEY法によるとスペクトルはエネルギー走査の向きなどに依存せず形状が変わらないことを見出した.X線の吸収によって試料表面から電子が放出され,試料表面は帯電するが,この帯電電位がXAS測定中一定ではないためTEY法によるとスペクトルが歪む.しかし高エネルギー成分(オージェ電子)のみを検出するPEY法では試料の表面電位に多少の変化があっても電子収量の変化が少ないものと考えられる.絶縁性粉末試料のXAS測定に対し帯電効果の少ないスペクトルを得るのにPEY法は簡便でよい方法である.

著者関連情報
© 2021 公益社団法人日本分析化学会 X線分析研究懇談会
前の記事 次の記事
feedback
Top