2019 年 11 巻 1 号 p. 8-17
要旨:海外ではすでにアカデミック・ディテーリング(AD)が公正中立な医薬品情報活動として,医師の処方行動の適正化に貢献している.米国やカナダではAD 活動を支える公的な組織によってAD 資材開発とアカデミック・ディテーラーのトレーニングが提供されている.そこで,国内でもAD 普及を試み,薬剤師の専門性を確立する生涯教育を開始した.日本におけるAD は,基礎を臨床につなぐ科学的視点を強化し,エビデンスを基にした公正中立な医薬品比較情報を能動的に発信する新たな医薬品情報提供アプローチとして定義した.医薬品の科学的な特性と根拠に基づいた医薬品情報配信のためのデータベース開発やAD 資材開発はAD を行う上で不可欠である.同じ効果を示す薬剤の科学的特性から比較し,使い分けポイントを示すAD は,患者にとって最適な薬剤が処方されることが期待され,新薬の安易な処方集中も回避し,医療費抑制も期待されると考える.AD の実践には,医療の現場と大学教員とのさらなる連携が必要となり,アカデミック・ディテーラーは薬剤師の意識改革と専門性確立に大きく貢献することが期待される.