薬局薬学
Online ISSN : 2434-3242
Print ISSN : 1884-3077
11 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
総 説
  • 黒澤 菜穂子
    2019 年 11 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:北海道科学大学薬学部(以下,本学)では,グローバルな視点で活躍できる薬剤師の養成をめざしてきた.現在,本学において英会話力の修得を目的として開講されているものに,「実用英会話」(2 年,前期),「薬剤師実用英会話」(6 年,後期),「英語でトライ!たのしい薬剤師」(1~3 年,通年)がある.これらの授業は,すべて外国人講師による指導を中心に実施している.また,薬剤師としては英会話力だけでなく,外国人患者のニーズに応じた検索力も必要であることから,医薬情報学のDI 実習(必修)の中で外国人患者が薬局を訪問した際の情報提供を想定した課題演習を行っている.さらに,卒後教育として,原則年12 回,約1 時間の内容で,本学サテライトキャンパスを利用して「薬剤師のための実践英会話教室」を開講している.一方,筆者らが全国的に実施したWeb 調査の結果から,ほとんどの薬局薬剤師が「患者・顧客への対応」の必要性を感じ英会話を修得したいと思っているが,実際には時間がなくて勉強できないという実態がうかがわれた.今後,職場や大学が薬剤師の英語力向上をより積極的に支援していくことが重要と考えられる.

  • 小茂田 昌代, 尾関 理恵
    2019 年 11 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:海外ではすでにアカデミック・ディテーリング(AD)が公正中立な医薬品情報活動として,医師の処方行動の適正化に貢献している.米国やカナダではAD 活動を支える公的な組織によってAD 資材開発とアカデミック・ディテーラーのトレーニングが提供されている.そこで,国内でもAD 普及を試み,薬剤師の専門性を確立する生涯教育を開始した.日本におけるAD は,基礎を臨床につなぐ科学的視点を強化し,エビデンスを基にした公正中立な医薬品比較情報を能動的に発信する新たな医薬品情報提供アプローチとして定義した.医薬品の科学的な特性と根拠に基づいた医薬品情報配信のためのデータベース開発やAD 資材開発はAD を行う上で不可欠である.同じ効果を示す薬剤の科学的特性から比較し,使い分けポイントを示すAD は,患者にとって最適な薬剤が処方されることが期待され,新薬の安易な処方集中も回避し,医療費抑制も期待されると考える.AD の実践には,医療の現場と大学教員とのさらなる連携が必要となり,アカデミック・ディテーラーは薬剤師の意識改革と専門性確立に大きく貢献することが期待される.

原 著
  • 廣谷 芳彦, 川須 菖, 向井 淳治, 岡本 知佳, 大竹 由起, 川口 莉菜, 浦嶋 庸子, 池田 賢二
    2019 年 11 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:今回,日常生活での口腔内環境を悪化させる要因を明らかにする目的で,健康フェアにおける地域住民の口腔内環境の現状についてのアンケート調査と唾液検査の実施により,参加住民の口腔内環境悪化要因の探索を行った.健康フェア参加者に対し,う蝕・歯周病・口腔清潔度に関する7 項目の測定を行った.また,参加者情報と口腔ケアに関するアンケート調査を実施した.参加者は男性が32 名,女性が64 名であった.虫歯菌と酸性度において,参加者の測定値が平均範囲よりも高い値を示した.1 日2 回以上歯を磨いている参加者が大部分であったが,標準の3 分以上歯を磨いている参加者は約23%と少なかった.主成分分析では,3 回以上の歯磨きおよび虫歯を気になる参加者は総合的に歯の健康度で良い傾向が示された.以上の結果より,歯磨き回数が少ないことが特に口腔内環境を悪化させる要因である可能性が示された.

  • 斉藤 佑治, 浅野 由佳, 加藤 美紀, 灘井 雅行
    2019 年 11 巻 1 号 p. 26-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:安全かつ有効なセルフメディケーション推進のため,スイッチOTC 医薬品の製剤評価は不可欠である.本研究でFamotidine(FAM)のスイッチOTC 医薬品である口腔内崩壊錠ガスター10®S 錠(GS),ファモガス®OD 錠(FG),ならびに医療用医薬品ガスター®D 錠10 mg(GD)について溶出試験第1 液,第2 液,水における溶出挙動を検討したところ,GS とGD に比べ,FG からのFAM 溶出は速かった.そこで,無処置ラットおよび胃酸分泌抑制ラットに各製剤を経口投与したところ,GS とGD では血漿中濃度は類似していたのに対し,FG で血漿中濃度が若干高い傾向を示したが,薬物速度論的パラメータ(Cmax,Tmax,AUC0–5 h,t1/2)には有意差は認められなかった.この結果,製剤間の溶出挙動の差は,経口投与後の血漿中濃度推移に大きな影響を及ぼさず,GS およびFG はGDと同等な製剤であると推察された.

  • Atsushi Ishimura, Fumiyuki Watanabe, Munenori Fukui, Ruriko Suzuki, Mi ...
    2019 年 11 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    Summary: In this study, hospital pharmacists (hereinafter referred to as pharmacists) working with a medical doctor designed and implemented a pharmacotherapy management protocol to improve treatment compliance in outpatients with type-2 diabetes. Furthermore, we evaluated the factors involved in the clinical efficacy of our protocol. From 96 outpatients undergoing pharmacotherapy treatment for type-2 diabetes, 31 patients who already had >7.5% glycohemoglobin A1c (hereinafter referred to as HbAlc) for more than six months participated in this study. Although the BMI of the participants was not reduced at six months from the start of our study, the number of medication types used by them as well as their HbA1c levels were significantly reduced. As for satisfaction level after treatment, 31 patients (100%) said they found their treatment was beneficial and wanted to use it in the future. Moreover, 30 patients (96.8%) responded that the right medications for them had been provided by the pharmacist. The study results suggest that an appropriate choice of medications based on pharmaceutical knowledge, with the support of a doctor, and guidance on medication adherence by pharmacists were beneficial to diabetes patients with poor glycemic control over the span of our study.

ノート
  • 篠原 祐樹, 田中 直哉, 近藤 澄子, 加藤 誠一, 豊田 彬, 寺戸 靖, 大塚 祥貴, 青木 一恭, 矢島 毅彦
    2019 年 11 巻 1 号 p. 44-52
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:服薬率は治療効果に影響を及ぼす.爪白癬治療において,エフィナコナゾール爪外用液が発売され,内服薬の長期服用,副作用,薬物相互作用の問題点が解消され,アドヒアランス低下を回避できると思われた.しかし,エフィナコナゾール単独群の初回脱落率は45.3%であり,内服薬の併用群5.9%に比べて有意に高かった(p=0.002).また,爪白癬治療指導せんを用いた群では初回脱落率は15.4%であり,用いなかった群119 名中55 名(46.2%)に比べて有意に低かった(p=0.004).爪と皮膚の境界まで塗布できている群(80.6%)と1 回塗布量が多い群(91.7%)では縮小傾向を示した割合が高く,塗布方法により治療効果に差が出ることが示された.エフィナコナゾールは,治験の対象外であった重症患者(罹患範囲50%以上)に対しても有用性を示した(79.4%).エフィナコナゾールによる爪白癬治療において,薬剤師は特製の指導せんを用いることにより,患者アドヒアランスの向上に寄与できることが示された.

  • 平井 利幸, 渡邉 文之, 堀 晴香, 秋山 裕史, 寺門 祐介, 関 利一
    2019 年 11 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:株式会社日立製作所ひたちなか総合病院は薬薬連携の一環として,2014 年9月に医療情報連携ネットワークを開始し,保険薬局でも処方内容および検査値などの確認が可能となった.そのような中,薬局薬剤師による経口抗がん剤への積極的な薬学的管理のために,2015 年4 月に検査値に基づいた経口抗がん剤問い合わせ基準を作成し,運用を開始した.結果,問い合わせ基準作成前(以下,作成前),作成後の2 期間(以下,作成後①および作成後②)のそれぞれ7 カ月間で,経口抗がん剤の検査値に関わる問い合わせ件数は,作成前0 件から作成後① 20 件,作成後② 12 件になった.また,B 型肝炎ウイルス検査に関連するモニタリングレポート件数は,作成前1 件であったが作成後①と作成後②それぞれで13 件になった.今回の医療情報連携ネットワークを活用した取り組みは薬局薬剤師の経口抗がん剤の適正使用に寄与し,地域医療の質向上に有用であると考えられた.

  • 西野 潤一, 安永 愛理, 小澤 安里沙, 荒川 基記, 日髙 慎二
    2019 年 11 巻 1 号 p. 62-74
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:「患者向医薬品ガイド」と「くすりのしおり」は,莫大な人的リソースとコストを費やして作成されているが,認知度はいまだ低い.本研究では,これら資材の普及と有効活用に向けた課題抽出および解決策を探る目的で,薬学部1 年生を対象に認知度と理解度を調査した.患者向医薬品ガイドとくすりのしおりの認知度はそれぞれ8.4%,25.4%,また患者向医薬品ガイドの全般的な印象は,分量が多い(92.0%),難しい(59.2%)等であった.さらに,理解度を正確に測定するために,記載されている用語を主観的理解度に加えて客観的に評価する新たな手法を確立し,両指標の相関性から用語としての適切性を検討した.“解熱鎮痛”は正確に理解されている割合が高かったが,“幼児”,“小児”など日常でも使用される用語や“グルタチオン欠乏”など専門的用語に関しては,認識の差異があることや,ほぼ理解されていないことが明らかとなり,誤投与につながる可能性が示唆された.

  • 土井 信幸, 毎田 千恵子, 高橋 恵美利, 山田 一貴, 宮本 悦子, 秋山 滋男
    2019 年 11 巻 1 号 p. 75-84
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:患者が錠剤やカプセル剤をPTP 包装から取り出す行為を支援する目的で開発された取り出し補助器具(以下,補助器具)が市販されているが,これらの使用性に関する比較検討は行われていない.そのため患者背景や医薬品の特徴に合った補助器具を選択するための判断材料は不足している.本研究は,剤形に特徴のある4 種の内服薬を用い,4種の補助器具をそれぞれ用いた際のPTP 包装からの押し出すための力(押し出し力)および健常成人を対象とした補助器具の使用感を比較検討した.4 種の補助器具による押し出し力は,医薬品の形状で異なることが示された.同様に各種補助器具の使用感の評価項目も医薬品の形状で異なり,医薬品ごとに対象者が使用したいと考える補助器具は異なっていた.薬剤師は患者の手指残存機能を確認した上で服薬している医薬品のPTP 包装の形状,医薬品の形状・剤形に合った補助器具を選択することが重要であることが示された.

  • 阿部 佑一, 坂井 優美, 鬼立 めぐみ, 原 正, 久保田 隆廣
    2019 年 11 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:皮膚疾患に多用されるステロイド外用剤は,著しい治療効果をもたらす重要な成分である.外用剤の混合による配合変化に関する情報は必須であるが,十分な検討は行われていない.本研究では,実臨床でもステロイド外用剤と混合されることのあるザーネ® 軟膏との配合変化について検討した.油脂性基剤であるステロイド軟膏はザーネ® 軟膏と混合すると高温になるほど基剤が不安定になり,ステロイドの種類によっては含量が著しく低下した.ザーネ® 軟膏とo/w 型ステロイドクリームの混合では基剤は安定していた.ステロイド含量は高温条件下で低下したが,ステロイド軟膏との配合変化より緩やかであった.そのためザーネ® 軟膏との混合はステロイドクリームのほうが好ましいと考えられる.しかし,ステロイドの種類や製品によっては配合変化する組み合わせがあるため,患者の症状や薬剤の保存状態,コンプライアンスに合わせた薬剤選択が重要である.

症例・事例報告
  • 鈴木 伸悟, 藤田 勝久, 藤田 勝成, 藤枝 正輝
    2019 年 11 巻 1 号 p. 92-98
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:薬剤師が適切な受診勧奨を行う目的で,疾患カテゴリーごとに受診すべき症状をまとめた受診勧奨シートを地域連携している医師の意見も参考に作成した.受診勧奨シート導入後の相談来局者数,受診勧奨者数,受診勧奨後に処方せんを持って再来局した件数について調査を行った.2016 年10 月1 日から8 カ月間を調査期間とした.月間平均323.4 名の相談来局者のうち3.3%に受診勧奨を行った.受診勧奨した相談来局者のうち17.6%が,医療機関に受診し当薬局へ再来局した.再来局した3 症例のうち,症例1 は,手首の激痛を訴えた患者を受診勧奨し,痛風と診断された.症例2 は,胃の不調を訴えた患者を受診勧奨し,後に機能性ディスペプシアと診断された.症例3 は,皮膚の広範囲にわたる湿疹を訴えた患者を受診勧奨し,皮膚炎および皮膚感染症と診断された.以上の結果,受診勧奨シートの使用により,適切な受診勧奨ができることが明らかとなった.

  • 川原 弘明, 山田 晶久, 立松 宏太
    2019 年 11 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    要旨:薬剤の過剰投与を防ぐため,腎機能を評価することは薬剤師の重要な役割である.そこで,愛知県東三河地区の3 薬局にて,腎機能に関して処方提案を行っていた16症例について報告する.これら症例の腎機能評価方法は,血液検査値を患者に確認しCCrを計算したものが14 例,検査値が確認できなかったが薬歴や患者の状態等から腎機能低下の可能性を疑った症例が2 例であった.処方提案により,13 例(81.3%)が処方変更となっており,さらに10 例(76.9%)は処方提案内容と処方変更内容が一致していた.また処方変更に伴って多くの症例において薬剤費が減少し,1 例あたりの年間薬剤費は平均で57,000 円超の減少となることが試算された.薬局薬剤師による腎機能評価および処方提案は,医師の処方変更に影響を与え,より適正かつ安全な薬物療法へ貢献でき,医療費削減にも寄与できることが示された.

feedback
Top