薬局薬学
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Print ISSN : 1884-3077
総 説
フレイルな認知症と人参養栄湯
岡原 一徳
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2019 年 11 巻 2 号 p. 114-118

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抄録

要 旨:フレイルとは「加齢に伴い各種臓器の機能が低下し,身体の予備能力が低下した状態」を指す疾患概念である.一方,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia: BPSD)のうち「食欲低下などの摂食障害と意欲低下(アパシー)」が顕在化している特徴的な患者群が存在し,これらの患者ではフレイルが併発している場合がある.フレイルは認知症の発症要因および悪化要因とされているため治療介入が必要であるが,薬剤療法はまだ確立されていない.人参養栄湯[TJ-108 ツムラ人参養栄湯エキス顆粒(医療用)]は,古来より健忘のある高齢者の虚弱(フレイル)に用いられてきた処方の一つで,術後の体力低下,疲労倦怠,食欲不振,貧血などに対する効能効果を有する.実際,最近になり人参養栄湯がフレイルなアルツハイマー病患者の食欲低下やアパシー,さらには認知機能を同時に改善することが報告された.本総説では当院における知見も含めて,フレイルな認知症患者に対する人参養栄湯の効果,またその作用メカニズムについて概説する.

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© 2019 一般社団法人 日本薬局学会
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