YAKUGAKU ZASSHI
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総説
Fruits of Human Genoma Project and Private Venture, and Their Impact on Life Science
Akiko IKEKAWASumiko IKEKAWA
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2001 年 121 巻 12 号 p. 845-873

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抄録

1996年から2000年の間にサイエンス誌に掲載されたヒューマンゲノムプロジェクト(HGP)とこれに関連する記事を整理して小さな知識ベースを構築した。この知識ベースから公的研究資金が導入されたHGPと私的な研究資金を導入したベンチャー企業との血のにじむ努力によって成し遂げられた驚くべき偉業と, その成果が今日のバイオテクノロジー及び生命科学に引き起こしている革命的変化を明解に把握することが出来た。1990年代半ばには, これらのグループの努力は高速自動DNAシークエンサーや一度にすべての遺伝子をシステマティックに分析出来るテクノロジーの開発を促した。これらのテクノロジーを用いることによって遺伝子配列決定の速度が加速され, 両グループはヒトやその他の生物の完全な遺伝子配列を決定することが出来た。これらの成果によって比較ゲノミックス, ファンクショナルゲノミックス, コンピューターとバイオテクノロジーの境界領域, プロテオミックス等の新しい分野が生み出された。生物学的研究は少数の遺伝子や蛋白質に着目する研究から一度にすべての遺伝子や蛋白質に着目する方向へシフトし, 従来のバイオロジー, 医薬品開発, 治療の分野にも革命的変化が引き起こされた。可能性のある医薬品のターゲットの範囲が拡大し, 医薬品開発プログラムの, 合理的なターゲットに基礎を置く方策へのシフトが促された。ただ症状を抑えるのではなく原因を扱う新世代の高度に効果的医薬品を生み出すことの出来るファーマコゲノミクスという分野が誕生した。今後はだれにでも安全で効果のある従来の薬物治療からパーソナライズドメディシン, パーソナライズドセラピーへのシフトも認められるであろう。

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© 2001 The Pharmaceutical Society of Japan
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