1976 年 96 巻 7 号 p. 827-831
Improsulfan tosylateは実験腫瘍に対して特異な抗腫瘍スペクトルを示し, 従来のアルキル化剤に対して抵抗性を示すラット腹水肝癌AH-66あるいはAH-7974に対しても効果を示すことが知られている.Nitrogen mustardで耐性を誘導した吉田肉腫の耐性亜系に対してもimprosulfanは効果を示した.また, 本薬物は臨床的にbusulfan耐性白血病症例に対しても効果が認められている.一方, 静置浮遊培養細胞の増殖, 分裂期への移行, あるいは蛋白ならびに核酸合成に対しては, improsulfanとnitrogen mustardの作用間に本質的な差異は認められていない.現在, 本薬物が臨床的にも使用されていることから, この薬物の投与方法を検討するための知見を得る目的で, さらに培養細胞に対する作用について検討を加えた.本報告では, improsulfanの培養細胞のコロニー形成に対する作用, ならびにDNA鎖切断作用について報告する.