I)女性の頭髪の毛幹を用い,死亡細胞からなる組織の変化が把握できる新しい組織化学的方法を検索した。II)発毛時期と長さ(30cm)がほぼ同じ毛を用いて,毛幹の特徴,すなわち毛の太さ,メラニンの分布,毛小皮,毛皮質,毛髄質に及ぼす年齢(18〜52才)の影響を調べ,以下の結果を得た。(a)毛の太さは加齢に伴って反比例する傾向にあった。(b)メラニン顆粒の分布の変化は,加齢に伴って明らかになったが,この変化は個人差が大きかった。(c)メラニン顆粒の分布の変化は,毛皮質の変化を示唆している。(d)頭髪の特徴であるメラニンを含まない毛小皮と年齢との関係は見出すことが出来なかった。(e)毛皮質には加齢に伴って細胞間充物質の増加が認められた。(f)頭髪特有の毛髄質は,年齢に関係なく,毛幹の弾力性を保つのに重要であることが判った。(g)毛髄質は毛幹の破損を防ぐのに強く役立っていることを見出した。