2016 年 65 巻 1 号 p. 31-38
重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome, SFTS)は,2011年に中国から報告されたブニヤウイルス科フレボウイルス属のSFTSウイルス(SFTSV)による新興ウイルス感染症で,マダニ媒介性感染症と考えられている.我々が2012年秋に診療にあたった患者の血液からSFTSVが分離され,これが日本国内において初めてウイルス学的にSFTSV感染症と確定診断された患者となった.SFTSの臨床像は,発熱,血小板減少,白血球減少,消化器症状のほかに,筋症状,神経症状,凝固異常など多彩であり,しばしば血球貪食症候群を合併する.病理学的にはウイルス感染細胞の増生を伴う壊死性リンパ節炎が特徴的所見である.現時点では対症療法のほかに特異的治療はない.2013年1月から現在までに140名以上の患者が確認されている.後方視的調査からSFTSVは以前から日本に存在し,患者は中高年に多くみられ,西日本に偏在しており,春から秋にかけての発生が多いことが分かっている.さらに,国内疫学調査によってウイルス保有マダニや抗SFTSV抗体陽性動物が国内の広い範囲に分布することも判明している.研究面では,急性期の血中ウイルス量や炎症性サイトカインの変動や,感染動物モデルによる病態解析も進捗しつつある.本稿では,日本におけるSFTS発見とSFTSの臨床および疫学的知見,SFTSVについてのウイルス学的知見について総説する.