2023 年 72 巻 3 号 p. 97-
様々な疾患を抱え,訪問看護サービスを利用しながら在宅生活をおくる認知症高齢者が多く存在する.本研究では疾患を持つ認知症高齢者が医療機関に入院した場合に,訪問看護師と病棟看護師が,入院生活における認知症ケアや在宅復帰支援のためにどのようなことを実践しているのか,どのような連携・協働が必要なのかを明らかにする.
在宅復帰を目的とする地域包括ケア病棟に勤務する看護師21名に認知症ケア,在宅復帰支援の現状,訪問看護師との連携・協働についてインタビューを実施した.分析の結果,病棟看護師は,地域からの受け入れや在宅復帰という≪果たせていない地域包括ケア病棟の役割≫の現状や≪病棟看護の限界≫を感じるなど【役割遂行の葛藤】を抱きながら,認知症高齢者の在宅復帰支援のために【病棟看護に生かす在宅の視点】の充実を図り【在宅ケアを支える職種との連携】を模索していた.
そこで,認知症高齢者の在宅生活を支援する訪問看護師17名に,有用だと考える病棟看護師との連携・協働,認知症ケア等についてインタビューを行った結果,2カテゴリと9サブカテゴリが抽出された.病棟看護師が≪訪問看護の理解≫を深め【訪問看護の特性の共有】を行うことで,自宅での生活を知る訪問看護師との【看看連携によるケアの実践】によって認知症高齢者の在宅復帰支援を医療機関と在宅という双方向から実践できると考えていた.
病棟看護師と訪問看護師が,積極的な連携・協働を実践することで入院中の認知症ケアの充実につなぎ,病棟と在宅の双方から在宅復帰支援を行うことができる.そこで,入院早期から連携・協働をスムーズに行うための方策として,疾患の治療経過やリハビリテーションの進捗状況に沿ってどのような連携・協働を行うのかを可視化されたシステムを作成・活用することが有効であると考える.そのことによって看看連携が促進され,認知症高齢者の在宅復帰支援が実現する.