COVID‑19流行により新人保健師の人材育成体制が大きく揺らぎ,成長を促進する経験を十分に重ねられなかったと推定される.本研究の目的は,平時の人材育成体制を熟知する管理職保健師の視点から,COVID‑19流行下で保健所に入職した新人保健師の成長とその背景を明らかにすることである.
研究参加者は,A県内で2020または2021年度採用の新人保健師が1年目に所属した県型保健所の管理職保健師6人である.『新人保健師の反応』『成長の評価』『指導・サポート体制』『指導・サポートするうえでの困難』について,半構造的個別面接によりデータを収集した.ナラティヴ分析のテーマ分析を参考に質的記述的に分析した.
その結果,新人保健師11人についての語りが得られた.COVID‑19流行下での経験は,切羽詰まって攻撃的な【一般住民や医師への対応】,健康観察を通し関係構築するなどの【患者や濃厚接触者への対応】,緊張感のある【感染者発生施設との対応】などの14コアテーマから構成された.COVID‑19流行下での成長の評価は,21コアテーマから構成され,【使命感を獲得することができる】【状況を把握し,自ら率先して動くことができる】などのポジティブな内容と,【適切な報告・連絡・相談が難しい】【職場内での積極的なコミュニケーションをとることが難しい】などのネガティブな内容が含まれた.外部環境は,【新人育成体制の機能不全】【緊張感のある職場内雰囲気】【保健師の役割や専門性を学ぶ機会の減少】などの5コアテーマから構成された.
新人保健師は,健康危機対応能力だけでなく新人保健師に求められる基本的な対人支援能力や社会人基礎能力などを獲得したと考えられた.背景には,COVID‑19感染拡大の危機的状況への組織的対応の一部を,不慣れな中でも担うことに迫られた経験があった.成長を促進させたのは,若手保健師も含め異なる立場の保健師それぞれが役割を補い合いながら,職場内で支え合う雰囲気をつくっていたことが示唆された.