抄録
妊娠時に腰痛を発症する女性は多い.そこで妊娠時腰痛の発症率, 臨床像, 危険因子などを調べるために, 分娩後10日以内の褥婦175例に対し, 入院中直接腰痛に対する問診および診察を行った.その結果妊娠中68%に腰痛を認めたが, その77.3%が31週までに発症していた.また30歳未満を若年群, 30歳以上を高齢群と分けると, 各群間の腰痛出現率に有意差は見られなかった.さらに, 分娩歴, 腰痛歴, 妊娠前後の体重差, 妊娠前肥満度, 新生児体重についても腰痛出現率に有意差は見られなかった.しかし, 初産婦では若年群で有意に腰痛出現率が高かった.また, 分娩直後の診察より仙腸関節部痛が18%に認められたが, 追跡調査の結果80%は1カ月以内に痛みが消失していた.