抄録
一般女性住民における腰椎すべりの出現頻度を調査し, 女性特有の全身的因子とすべりの出現頻度との関連について検討した.対象は山村地域に在住の一般成人女性1,245名であり, アンケート調査で腰痛の有無, 出産回数, 卵巣摘出術の既往などを調査し, 腰椎側面X線像では, すべりの有無, すべりの方向, すべり高位を検討した.すべりは210例 (16.9%) にみられ, 年代が増すにつれ出現頻度は増加したが, 50歳代前半と後半の間での増加率が最も高かった.すべりの方向は前方が155例, 後方が50例であり, 前方すべりはL4, L3, L5, 後方すべりはL3, L2, L2+L3の順に多くみられた.腰痛との関連では, 前方すべりと腰痛の間には有意な関連がみられたが, 後方すべりにおいてはみられなかった.また, 出産回数および両側卵巣摘出術の既往とすべりの出現頻度との間には, どちらも統計的に有意な関連は認められなかった.