日本養豚学会誌
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原著
食品製造副産物を主原料とした肥育豚用発酵リキッド飼料の調製と給与成績
井尻 哲中山 阿紀中野 公隆山内 慎也角川 幸治土屋 義信
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2007 年 44 巻 2 号 p. 31-39

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抄録

まだ十分に有効利用されていない広島県内の食品工場製造副産物の飼料化を推進するため,発酵リキッド法による肥育豚用飼料への活用を検討した。
食品製造副産物である食パン耳,馬鈴薯皮,ポテトチップ屑,ジャム製品ロス,緑茶抽出かす,および豆腐かすを主原料とし,これに養分調整のために数種類の飼料原料を混合して,肥育豚の栄養要求量を満たす飼料設計を行った発酵リキッド飼料(FLF)を調製した。
原料105kgを粉砕,混合し,加熱殺菌した後,冷却し,スターターとしてLactobacillus plantarum A305株を用いて前日から培養しておいた同原料10kgを加え,33℃で20時間培養した。培養後のFLFは109.4個/gという高濃度の乳酸菌を含み,pHは4.2を示した。
乾燥配合飼料(FF)と調製したFLFを肥育豚に給与し,発育および飼料の利用性に及ぼす影響を調べた。試験には99日齢の肥育豚11頭を用い,体重を揃えて,対照区と試験区に割り付け,対照区にはFFを,試験区にはFLFをそれぞれ20日間不断給餌した。
その結果,4日間のFLF馴致期間を除く16日間の発育成績を比較すると,1日平均増体量(DG)は,対照区および試験区それぞれ965g, 1,207gとなり,試験区の方が対照区よりも有意(p<0.05)に高かった。
1日当たり飼料摂取量は,試験区が14,271g(乾物換算 : 3,568g),対照区が3,750g(乾物換算 : 3,048g)であった。乾物摂取量での飼料要求率は,試験区2.96,対照区3.16で試験区は対照区に比べて飼料効率が約6%優れていた。
以上の結果から,広島県内において,現在,食パン耳以外はコンポスト原料とされているこれらの製造副産物は,発酵リキッド化法により飼料利用できることが実証され,資源の有効活用と排出サイド・畜産サイド双方の経済性向上に寄与できる可能性が示唆された。

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