日本養豚学会誌
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原著
国内生産農場で飼養されている多産系母豚における里子処置が離乳時の子豚成績や離乳後の繁殖成績に及ぼす影響
西村 祐紀子香川 雅彦香川 洋子香川 貴俊佐々木 羊介
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2021 年 58 巻 1 号 p. 19-27

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抄録

近年育種改良による産子数の増加に伴い,哺乳可能な頭数より多くの子豚を分娩する母豚が増加しており,その対策として里子処置が実施されている。本研究では,里子処置が離乳時の子豚成績や離乳後の繁殖成績に及ぼす影響を探査することを目的とした。本研究では多産系母豚を飼養している養豚生産農場1農場において2016年3月から2017年2月までに分娩した母豚1,337頭における分娩記録2,292記録を分析に用いた。本研究では里子処置の実施の有無に基づき,各母豚を以下の3つに分類した:里子処置なしの母豚,里子により哺乳開始頭数が自身の生存産子数よりも減少した母豚(里子-の母豚),里子により哺乳開始頭数が増加した母豚(里子+の母豚)。里子処置と生産性の関連性の分析には線形混合効果モデルを用い,哺乳開始頭数と産次をモデルに加えた。本研究に用いた2,292腹のうち,里子が行われた腹は1,366腹(59.6%)であり,里子-が28.5%,里子+が31.1%であった。一腹当たり離乳子豚数および哺乳中子豚死亡率は哺乳開始頭数が13-14頭においてのみ里子処置間の差がみられ,里子-および里子なしの母豚は里子+の母豚よりも哺乳中子豚死亡率が1.2~1.7%高く,一腹当たり離乳子豚数が0.3~0.4頭低かった(P<0.05)。離乳時子豚平均体重は里子-の母豚が里子なしおよび里子+の母豚よりも0.2kg低かった(P<0.05)。離乳後初回交配日数および初回交配時分娩率は里子処置と関連性がみられなかったが,次産次一腹当たり生存産子数は里子-の母豚が最も多く,里子+の母豚が最も少なかった(P<0.05)。結論として,里子処置の実施の有無によって離乳時の子豚成績の一部に差がみられたものの,離乳後の繁殖成績には差がみられなかった。

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