日本養豚研究会誌
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台湾在来豚に関する遺伝学的研究
I. 桃園種の血液型および血清蛋白型変異
田中 一栄大石 孝雄黒沢 弥悦
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1979 年 16 巻 1 号 p. 37-44

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抄録

台湾在来豚 (桃園種) の血液型および血清蛋白型の変異を明らかにするために北部と南部の2地域で調査を行ない, その遺伝子頻度から遺伝的距離係数を求めて他品種との関係を比較検討した。得られた結果は次の通りである。
1) 北部と南部の集団間で, いくつかの血液型システムにおける遺伝子頻度に有意差が認められた。これは淘汰による急激な減少のため, 現在特定の地域にのみ閉鎖的に飼養されている集団のサイズが小さく, 従ってこれら2集団間に遺伝的な分化がおきているものと考えられる。
2) 北部の集団では, TfシステムにおけるBB型およびBC型の出現頻度が43%および57%と高かったにも拘らずCC型のそれは0%であり, Tfc遺伝子がある家系内では劣性致死遺伝子と連関していることが示唆された。
3) 南部の集団で新たな変異体, Hp-XおよびHp-Yが認められ, また両集団でAm-Yが検出された。これらの変異体を支配する遺伝子は比較的高頻度で集団に保持されていることが推察された。
4) 桃園種の遺伝子頻度を欧米系改良種と比較するとG-, Ka, Lh, Tfc, Hp2, Hp3, AmAおよびAmc遺伝子の頻度が高く, K-, L-およびPaB遺伝子を欠くなど, 東亜系在来豚の特徴が顕著に認められた。
5) 遺伝的距離係数の比較では, 桃園種はオーミニ豚と最も近く, 次いでタイ, フィリピン, 東マレーシアおよび西マレーシアの各在来豚の順であり, 欧米系改良種とはいずれも0.5以上の大きな値を示した。

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