日本養豚研究会誌
Online ISSN : 2186-2567
Print ISSN : 0388-8460
ISSN-L : 0388-8460
鹿児島バークシャーの肉質特性と評価技術に関する研究
IV. 胸最長筋の全コラーゲン量と Labile コラーゲン量について
川井田 博奥薗 義美福元 守衛楠元 薩男宮内 泰千代加香 芳孝小島 正秋
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 16 巻 2 号 p. 104-110

詳細
抄録

鹿児島県畜産試験場養豚部で育成された鹿児島バークシャー (去勢11頭, 雌8頭), 大ヨークシャー (去勢6頭, 雌6頭) の計31頭の供試豚より得られた胸最長筋について, 特に筋肉の軟らかさに関係があると思われる筋肉中の結合組織の基礎蛋白質であるコラーゲン量およびラバイルコラーゲン量の割合をオキシプロリン量によって測定し, 品種別, 性別, と殺体重別に差の有意性を調べるためにF検定を行って比較検討した。
まず, 全コラーゲン量についてみると, 鹿児島バークシャー (621.63μg/g)<大ヨークシャー (659.17μg/g) で鹿児島バークシャーが大ヨークシャーに比べて全コラーゲン量が少ないという結果が得られ品種間に有意差が認められた。
つぎに全コラーゲン量に対するラバイルコラーゲンの割合をみると, 鹿児島バークシャー (2.81%)<大ヨークシャー (3.63%) で, 全コラーゲン量と同様に鹿児島バークシャーの方がこの割合は小さいという結果が得られ, 全コラーゲン量にも, ラバイルコラーゲン量にも, ともに品種間に差があることが明らかとなった。また性別についてみると, 全コラーゲン量, ラバイルコラーゲン量の割合とも雌が去勢に比べて多いという傾向が認められた。一方と殺時体重別にみると, 両品種とも体重の増加とともに, 全コラーゲン量, ラバイルコラーゲン量の割合が, 多くなる傾向が認められた。この結果より年齢とともにコラーゲン量, ラバイルコラーゲン量は, 増加するものと推察される。
最後に, 胸最長筋について全コラーゲン量と, それに対するラバイルコラーゲン量の割合と, 先に報告した両品種の筋線維の太さ, 筋束の太さおよび筋東内筋線維数との間の相関関係を品種別に調査し, t検定により有意性を調べた。その結果, 鹿児島バークシャーにおいては全コラーゲン量と筋束の太さ, 筋束内筋線維数の間に有意または有意に近い正の相関が認められた。一方大ヨークシャーでは, 全コラーゲン量と筋線維の太さ, ラバイルコラーゲン量の割合と筋線維の太さとの間に有意な正の相関が認められた。つまり鹿児島バークシャーにおいては, 筋束が太く, 筋束内筋線維数が多くなるとともに全コラーゲン量も多くなり, 大ヨークシャーでは, 筋線維が太くなると全コラーゲン量, ラバイルコラーゲン量の割合とも多くなる関係が認められた。したがって筋肉の“軟らかさは”, 品種間で差があり, また筋線維の太さ, 筋束の太さおよび筋束内筋線維数が肉の“軟らかさ”, つまり“うまさ”, と関係があるのではないかと推察された。

著者関連情報
© 日本養豚学会
前の記事 次の記事
feedback
Top