日本養豚研究会誌
Online ISSN : 2186-2567
Print ISSN : 0388-8460
ISSN-L : 0388-8460
哺乳豚の免疫不全に関する機構について
波岡 茂郎
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 20 巻 1 号 p. 1-11

詳細
抄録

哺乳期子豚は初乳を摂取するにもかかわらず, とくに種々の局所感染に母子感染の型で罹患しやすい。その原因として初乳に由来する血中IgGは局所感染を抑制するには至らず, かつ子豚の局所における免疫応答能が不全であることがあげられる。一方哺乳豚はヒト小児の common variable hypogammaglobulinemia with B lymphocyte に類似の状態を生理的に有すると考えられる。このような哺乳期の免疫不全における機構および, この時期に種々の免疫増強剤を与えた場合その免疫応答能にどのような影響がみられるかについて2, 3の検討を行なった。
1. 1及至4週齢における小賜粘膜固有層における IgA bearing cell 数は少なく, その増加はきわめてゆるやかである。しかし, 生下時から5日齢にかけて免疫増強剤 peptidoglycan あるいは transfer factor を経口投与あるいは接種することによって該細胞数は対照に比べて増加し, 逆に小賜内大賜菌数は減少した。また免疫増強剤接種群では対照に比較して下痢発生率が有意 (P>0.005~0.05) に低かった。しかし免疫増強剤を投与しても血中IgGレベルは対照に比べて高まらなかった。
2. 1~5週齢豚の未梢血由来リンパ球の幼若化試験を行なったところつぎのような成績を得た。すなわちcpm, SI値とも1週齢から成豚のそれに準ずる高値を示した。また免疫増強剤投与子豚のそれらに対照と比較してcpmおよびSI値が有意に高まることはなかった。
3. 2, 3および4週齢豚の脾蔵および賜間膜リンパ節 (MLN) におけるSRBCに対する有核細胞中のPFCをみたところその値はきわめて低く, 両者のそれを比較するとMLNではさらに低かった。これらのことから哺乳豚の免疫応答能は Suppressor T 細胞による免疫抑制の結果B細胞の分化が悪いことが想像される。

著者関連情報
© 日本養豚学会
次の記事
feedback
Top