日本養豚研究会誌
Online ISSN : 2186-2567
Print ISSN : 0388-8460
ISSN-L : 0388-8460
豚のふん尿処理に関する研究
II. 豚舎外におけるふんの乾燥
瑞穂 当美斉津 康民山田 豊
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 21 巻 3 号 p. 150-156

詳細
抄録

豚舎外へ搬出された高水分のふんを, 次の処理段階へ向けて乾燥する場面を想定した実験をおこない, 次のような結果を得た。
1) ふんを単に放置しておくだけにくらべて, 攪拌操作を加えると, 数倍以上の乾燥促進効果が得られる。ただし, あまりにも高水分にすぎて流動状を呈するふんに対しては, 攪拌の効果が生じないので, 予め水分調整材料を加えて含水率80%以下にしてから, 攪拌操作に移ることが望ましい。
2) 豚ふんの特性として, 含水率70%前後の頃に最大の粘性を示し, 器物に粘着し, あるいは大塊を形成して, 攪拌に大きな力を必要とする。これを避けるには, 予め水分調整資材を投入して含水率65%程度以下にしてから, 攪拌・乾燥に移る方法をとればよい。容積的にはかさばるけれども, 装置の攪拌力は小さいもので可能となり, 水分蒸発のための表面積が大きくなる利点が生ずる。
3) 攪拌に加えて, 送風を併用すれば, ふんの乾燥速度はさらに飛躍的に促進される。
4) 温度が高いほどふんの乾燥は速いが, 空気の流れがさまたげられた状態では, 高温の効果は減殺される。乾燥の進みぐあいは, 50℃の無風条件と, 25℃の通風条件とが, ほぼ等しい状況が見られた。
5) ビニールハウスを使用するふんの乾燥の場合, 太陽熱を蓄積したいという希望と, 通気を良くしたいという希望とは, 相反する関係となるが, 実験結果を総合すれば, 蓄熱よりも通気を優先する方が有利であると判断される。
6) 風は, 水分を持去る働きのほかに, 気化熱を奪われたふんを大気温まで温める働きもするはずである。太陽エネルギーの総合利用という観点から, ハウスという限られた面積で捕捉できる太陽熱と, 低温ではあっても無限大量の大気温とをくらべてみるとき, 通風乾燥の意義は再認識されてしかるべきものと思われる。
7) 豚ふんの堆肥化を進めるにあたって, オガクズなどの代りに発酵中の堆肥を戻して, 水分調整材料として利用することも考えられる。その際, 戻す量を少量ですませたいならば, よく乾かしてから用いるべきであるが, 乾燥のしやすさを実験した結果, どの発酵段階のものでも大差はないという結果が得られた。

著者関連情報
© 日本養豚学会
前の記事 次の記事
feedback
Top