日本養豚研究会誌
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豚のふん尿処理に関する研究
V 豚ふんの堆肥化試験: とくに堆肥の熟度について
瑞穂 当美斉津 康民山田 豊
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1985 年 22 巻 2 号 p. 71-81

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抄録

堆肥の熟度に関する諸問題を解明することを主たる目的として実験をおこない, 次のような知見を得た。
1) 高温発酵期にある未熟堆肥は植物種子の発芽を障害するが, その原因は遊離のアンモニアであると思われる。通常の施用量の範囲で土と均質に混合使用された場合は, この発芽障害は現われないし, 水分調整材としてオガクズを比較的多量に配合した条件では発芽障害は発現しなかった。
2) 順調な高温発酵期間を経過して常温に戻った状態になれば, 易分解性成分はほぼ分解を終ったことを意味するわけで, 実用上からは堆肥は出来上ったと言える。この状態まで堆肥化が進んだかどうかは, もはや品温上昇の能力がないこと, 加温してもアンモニアあるいは炭酸ガスが生成されないこと, ヘミセルローズの分解がほぼ完了していることなどで判定できる。
3) セルローズの分解は高温発酵期間をすぎたあとも徐々に進行するし, 燐酸や加里の無機化もさらに進むので, 堆肥に速効性を望むならば少なくとも7週以上の堆肥発酵期間が必要と思われる。なお, 無機化が進んだ状態の堆肥は高い滲透圧を呈するようになるので, 過量の施肥は植物に濃度障害を与える心配があることに留意すべきである。
4) 堆肥原料中に含まれるリグニン, 硅酸, 燐酸, 加里などの不揮発性成分は, ヘミセルローズやセルローズの分解による堆肥容積の減少にともなって現物中の濃度としては濃縮され, 堆肥の仕上り品質に影響するので, 水分調整材など堆肥原料の配合にあたって留意しておくことが望ましい。逆に, 適当な資材を計画的に配合すれば, 希望する品質成分の堆肥に仕上げることも可能となる。
5) 堆肥の完熟についての定義は現在までのところ広く合意されたものはないし, 堆肥原材料の配合如何によって各成分値は変動するので, 堆肥全般に共通する熟度判定基準値の設定は, 現実問題として困難と思われる。本研究において, 燐酸あるいは加里は, 総量の70~80%が可溶態に変ることが判ったが, この現象は堆肥のいわゆる完熱の指標となり得るかも知れない。
6) 水分調整材としてオガクズを使用することは, 含有する酸性成分と, 豚ふんからのアンモニアとが, 互助的に中和される効果も期待されるし, 堆肥発酵そのものに不利な結果は認められなかった。また, 豚ふんを主原料とする条件であるかぎり, むしろ過剰量の窒素を含むわけであり, 土地に施用していわゆる窒素飢餓の弊害が発生する心配は無用と考えられる。

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