日本惑星科学会誌遊星人
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特集「火星圏のサイエンス」
火星衛星フォボスとディモスの起源・進化の現状理解
兵頭 龍樹玄田 英典
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2018 年 27 巻 3 号 p. 216-223

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抄録

火星には2つの小さな衛星フォボスとディモスが存在する. この2つの衛星はJAXAのサンプルリターン計画(通称MMX計画, Martian Moons eXploration)のターゲット天体に選定され, その起源と進化の深い理解は探査の科学的価値の最大化, および, 火星史の解明において重要となる. 歴史的に火星衛星の起源は飛来した小天体が重力的に捕獲されたと考えられてきたが(捕獲説), 現状では火星衛星の軌道特性を説明することに成功していない. 一方, 近年, 火星衛星が巨大衝突の副産物として形成されうることが示された(巨大衝突説). もし火星衛星が巨大衝突で形成されたならば, 火星衛星には多くの火星由来物質が含まれることが期待され, MMXサンプルリターン計画によって形成起源の論争に決着が着くだけでなく, 人類初となる火星物質のサンプルリターンも期待される. 本論文では, 近年、著者らによって大いに進展した巨大衝突説をまとめ, 火星衛星の起源と進化の現状理解について議論する.

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© 2018 日本惑星科学会
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