2019 年 28 巻 1 号 p. 24-36
月内部の揮発性成分に関して,この半世紀にわたり活発に検討が進められてきた.アポロ・ルナ計画当初,月試料の全岩分析では十分な証拠が得られず,月は揮発性成分に枯渇した天体とされてきた.しかし,近年の技術革新により微小領域分析が実現すると,月試料に含まれる各種鉱物からマントルに大量の水が存在する痕跡が発見された.月内部の揮発性成分は,マグマオーシャンからマントルの形成に至る進化史を紐解く重要な鍵であると共に,将来の宇宙探査における重要な科学テーマとなり得る.従って本著では,関連する重要な研究成果を紹介すると共に,今後の課題と将来期待される月探査計画の展望について解説する.