2019 年 28 巻 1 号 p. 37-44
月の両極域には太陽光の当たらない極低温環境(永久影)が存在し,そのような場所では揮発性の高い物質(水など)が安定して存在しうる.日本では今,極域の水をターゲットとした資源探査の検討が始まった.中性子分光法は天体表層に分布する水素量を測定することができる観測手段であり,月探査を含め今までに多くの惑星探査に用いられてきた.本論文では過去の月探査(ルナ・プロスペクター,ルナ・リコネサンス・オービター)に搭載された中性子分光計の水に関する観測結果をレビューする.さらに中性子分光による水観測の現状の課題点を明らかにし,将来の水探査における中性子分光の果たす役割について議論する.