2019 年 28 巻 1 号 p. 45-52
近年の月探査やApollo試料・月隕石の分析から,月面に水が存在することが強く示唆された.この発見は惑星科学の分野にとどまらず,月での有人活動などを目指す工学の分野からも注目を集めている.中性子分光計の観測では,以前から月における水素原子の濃集が議論されていた.一方,水の存在を議論できる近赤外分光計による観測結果は無く,中性子分光計で観測された水素原子が,水素原子として存在しているのか,水として存在しているのかなどについてわかっていなかった.本項では,近年の月の水の発見について,近赤外分光計による原理を説明し,観測結果をレビューする.