2020 年 29 巻 4 号 p. 200-
(要旨) 天体の古磁場とその変遷は,天体進化の情報をもたらす.月においては,月表面で採取された岩 石から1 ~100 µT におよぶ強い磁場が過去に存在したと推定されること[1],および,月表面付近の磁化による磁気異常[2]には月磁場が逆転を繰り返していた証拠がみられること[3]から,月の核がかつてダイナモとして機能していたことが示唆される.一方で,月ダイナモを駆動するエネルギー源の変遷やダイナモが停止した時期等,月科学における本質的な疑問が残されている.本論文では,月縦孔周辺と内部における磁場観測が,古月磁場の時間変化に関する新たな情報をもたらす可能性があることを紹介し,月や火星の縦孔を通して地下空洞を調査する「月火星の縦孔・地下空洞直接探査(UZUME)計画」に期待することを述べる.