(要旨) 天体の古磁場とその変遷は,天体進化の情報をもたらす.月においては,月表面で採取された岩 石から1 ~100 µT におよぶ強い磁場が過去に存在したと推定されること[1],および,月表面付近の磁化による磁気異常[2]には月磁場が逆転を繰り返していた証拠がみられること[3]から,月の核がかつてダイナモとして機能していたことが示唆される.一方で,月ダイナモを駆動するエネルギー源の変遷やダイナモが停止した時期等,月科学における本質的な疑問が残されている.本論文では,月縦孔周辺と内部における磁場観測が,古月磁場の時間変化に関する新たな情報をもたらす可能性があることを紹介し,月や火星の縦孔を通して地下空洞を調査する「月火星の縦孔・地下空洞直接探査(UZUME)計画」に期待することを述べる.
(要旨) 本論文では,月縦孔降下中の探査プローブが撮像した複数の時系列画像を用いて,月縦孔側壁形状を3次元再構成することを目的とする.3次元再構成では,Simultaneous Localization and Mapping (SLAM) の技術を援用し,探査プローブの自由落下運動条件をSLAM の各処理過程に組み込むことによって,カメラの回転に頑強なSLAM へと改良した.提案SLAM のシミュレーション検証において,3次元再構成の精度向上を確認した.さらに,探査プローブ搭載カメラの性能の違いによる3次元再構成への影響の検証も実施し,本研究で得られた検証結果から,ミッションシナリオと探査プローブの運動要件,カメラ性能に関する議論を行った.
小惑星はその反射スペクトルの形によって複数のタイプに分類され,組成の統計的な調査によって小惑星の起源や太陽系進化に関する情報が得られる.しかし,厳密なタイプ分類には分光観測が必要であり,これまで発見されている小惑星のうちタイプが判明しているものはごく一部に過ぎない.よって,本研究では近赤外域のJHKsバンドの測光値から簡易的かつ定量的にスペクトル型を判定する方法を提案する.2MASS の小惑星カタログを利用して,近赤外線二色図上におけるタイプごとの分布を二次元正規分布でモデル化し,各点における確率密度を計算することでタイプの判定と評価を行う.開発した判定法を用いてタイプが未知あるいは不明瞭な2799件の小惑星についてタイプ判定を行い,判定法の信頼性を多角的に検証した.
2020年10月は,あかつきが金星の周回軌道に入ってから間もなく5年という時期でしたが,特筆すべきイベントのあった「多忙な一か月」でもありました.ひとつは,探査機にとって4年半ぶりの「軌道微修正運用」であり,もうひとつは「日本の宇宙機3機による金星協同観測」という,日本の宇宙科学史上でも初のイベントへの参加です.その二つについて,運用の当事者目線からドキュメンタリ風にお伝えしています.
◇日本惑星科学会第137回運営委員会議事録
◇日本惑星科学会第138回運営委員会議事録
◇第53回総会
◇日本惑星科学会賛助会員名簿
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