日本惑星科学会誌遊星人
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特集「新・惑星形成論」
デブリ円盤に付随するガスの起源– その解明へ向けて
樋口 あや
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2022 年 31 巻 1 号 p. 78-87

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抄録

彗星や隕石の起源であるカイパーベルト天体は,太陽系内で惑星が形成された名残であると考えられており,太陽系の成り立ちを調べる上で重要な研究対象である.このため,隕石の分析や彗星のガス成分の観測,近年では,はやぶさ2 によるリュウグウやOSIRIS-RExによるベンヌの調査,ロゼッタによる67P彗星の直接調査など様々な研究が行われてきた.この塵・岩石で形成される天体群の起源は「デブリ(残骸)円盤」として知られている.デブリ円盤は,太陽系外の若い恒星周りで発見された,主に塵(サイズがマイクロメートルからミリメートル程度の固体微粒子)や岩石(サイズがメートルからキロメートル程度の大きな固体で,塵が集積し形成されたもの)から構成される円盤である.数10-数100天文単位(au)の半径を持つリング状構造をしたものが多く見つかっており,塵の空間分布や既に円盤内で形成された惑星の探査などの研究がなされてきた.しかし近年,デブリ円盤にはほとんどないと考えられてきた「ガス成分」が多くのデブリ円盤で検出され,その起源が注目されている.2013年からは,Atacama Large Millimeter/submillimeter Array(ALMA)望遠鏡による観測結果が続々と出版され,ガスの検出が報告されたデブリ円盤はこれまでに20天体にのぼる.本稿は,近年のデブリ円盤の観測研究の進展について,これまでの研究を振り返り,解説する.

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