2022 年 31 巻 1 号 p. 68-77
ALMA望遠鏡によって,ミリ波帯での原始惑星系円盤観測が飛躍的に発展した.2014年の長基 線観測運用開始の直後は,数auスケールの高空間分解能を生かし,多数の円盤詳細構造を発見し,個々の天体の特徴付けが行われた.ここ数年は,これに加え,高感度を生かした大規模サーベイ観測によって,円盤の統計データも得られてきている.特に,比較的大きな円盤では,ダスト円盤のリング・ギャップ構造が普遍的に存在することが明らかとなり,詳細構造と惑星形成論を結びつけられるようになってきた.また,ダスト円盤と系外惑星系の統計的比較が可能となったことで,これまで注目されてきた進化中後期(≳ 100万年)の円盤の質量が系外惑星系の典型的質量を下回ることが明らかとなり,惑星形成のスタート地点の理解に疑問を投げかけている.本稿では,ALMAによって得られたダスト円盤の統計データを中心に,円盤観測と惑星形成論の繋がりを概観し,今後のミリ波円盤観測の展望を述べる.