2024 年 33 巻 3 号 p. 314-322
天王星は自転軸が公転面に対して98度傾いており,主な衛星も同じ傾いた軌道を回っている.天王星の衛星系の形成シナリオは複数提案されているが,本稿では自転軸の傾きと衛星系の形成を同時に説明できる巨大天体衝突シナリオについて詳しく解説を行う.まず,巨大天体衝突直後には重くてコンパクトな周天王星円盤が形成されるが,N体計算で検証を行なった結果,この円盤から現在の天王星衛星系を再現することは難しいことがわかった.一方で,初期に蒸発している周天王星円盤の粘性拡散過程を考慮すると,軽くて広範囲な固体の円盤へと進化し,この円盤からは現在の天王星衛星系を再現できる可能性が示された.最後に今後の研究の展開についても簡単に議論する.