本研究は,多段階漸増運動負荷試験中における動脈血中アンモニアおよび血漿カテコールアミンの動態が乳酸閾値(LT)と関連しているのかについて検討することを目的とした. 6 名の男性を被検者とし,実験に先だって自転車エルゴメーターによる多段階漸増運動負荷試験を行い,各人のLTを決定した.それをもとにして,LTを中心としてその前後に各4 負荷, 合計9 負荷からなる多段階漸増運動負荷試験を各人ごとに設定し,実施した. 負荷の平均上昇幅は, L T における仕事率の18±1(SE)%とした.LTにおける平均仕事率,心拍数,および動脈血中乳酸値はそれぞれ100±4,119±3,1.6±0.1mmol/lであった.動脈血中アンモニア値および血漿ノルアドレナリンは運動強度が強くなるにつれて上昇した.閾値は,多段階漸増運動負荷試験中においてこれらのパラメーターが増加し始める点とした.
動脈血中アンモニア値および血漿ノルアドレナリンの閾値は,すべての被検者においてLTと密接に関連した.しかし,アドレナリンおよびドーパミンは,血漿中のレベルが低く閾値を決定することが困難であった.これらの結果から,作業筋におけるAMPの脱アミノ化および交感神経系の興奮の閾値が, LTと密接に関連していることが示唆された.
抄録全体を表示